研究レポートReport

第4回 内観力 『ウェイトトレーニング編 No .2』

昭和59年の春、中京大学 体育学部 体育学科に入学した。
短距離の寮に入る予定だったが人数調整の関係で跳躍の寮に入った。

未だに忘れられない光景がある。
それは入寮して間もない風呂場での事だ。
当時、1年生は決められた時間にしか入浴できない。
大抵は同級生同士で仲良く入るのだが、たまたま4年生の先輩が風呂に入って来られた。


一同皆、『こんばんは!』の挨拶の後、静寂した。

棒高跳びの先輩だったので、その筋肉の凄さに圧倒されてしまった。
先輩の身体を見てから自分の身体を見て余りにも貧弱に思えた。
しっかりトレーニングを積まなければならないと決意を決めたのである。

大学のトレーニングジムに恩師の安田短明先生(故)の息子さんの和広さんがいた。

和広さんは鳥取県のワールドウィングの小山裕史先生のところでトレーニングの勉強をされてきた方だった。
(当時は『トレーニング革命』でまだ初動負荷トレーニングではない。)
和広さんに薦められ『トレーニング革命』の本を購入した。

読んでは見たものの当時は良く理解できなかった。
10年後、自分が小山先生の初動負荷トレーニングを
学びにいく運命であることをこの時は想像もしなかった。

初めて和広さんの身体を見たときは、ヘラクレスかと思うくらい凄い筋肉であった。
ウェイトトレーニングを本格的に指導してもらえるのは初めてだった。
早速、基本的なメニューの作成をお願いする。

トレーニングの際、必ず今どこの筋肉を使っているのかを意識するように指導された。

アームカールなら上腕二頭筋をバックプレスなら広背筋を意識するように心がけた。

ベンチプレスはある意味、一番意識しやすいトレーニングであった。
パンプアップした自分の身体を見て喜んだものだ。
(この事が後々、悩みの原因にもなるのも知らずに、、、、、、)


私が当時、一番得意であった種目がスナッチだった。
地面から一瞬にして頭上に持ち上げる動作だ。
身体全身で動作しなければうまく出来ない。


これらのトレーニングを経験することで筋肉を意識するという事を学んだ。


メニューの中で1番興味深かったのはスクワットである。
大腿四頭筋の前側ではなく大腿二頭筋の裏側を鍛えよという。
そして、背中にアーチを作って大腿二頭筋を意識しろと教わる。
高校時代はスクワットをする時に背中を意識する事など1度もなかった。
スクワットは大腿四頭筋を鍛えるものだと思っていたし、
いわゆるハムストリング(大腿二頭筋)はレッグカールで鍛えること位しか知らなかった。

当時の私は背中の筋肉は固くはなかったがアーチを作るのはうまくなかった。
今の私ならその原因は分かるのだが当時の私のレベルでは知る余地もなかった。
骨盤の使い方を知らない人間が背中のアーチを作ることは至難の技である。

現在でも多くの方々が取り組んでいるバランススクワットは少々問題がある。
背骨の使い方と筋肉のほぐし方を知らない人間が無理にポーズだけ求めると
ケガをする可能性が非常に高いのである。

立ち位置のバランス点、股関節の柔軟性、骨盤の可動域、背筋群の柔軟性、肩甲骨の可動域、
足の指の使い方、手の指の使い方、そして一番大切な身体の内側の意識の仕方が揃ってこそ
身体のバランス点『力点』が生まれてくるのである。
『力点』が生まれて初めて力の流れるラインであるパワールートを意識する事になる。 

このパワールートを自分自身で意識するトレーニングが内観力に繋がってくるのである。 


内観力は、このパワールートいかに意識できるトレーニングを積めるかで身体動作の
世界が変わりはじめるのである。
この話の内容は後半の方で詳しく述べていきたい。


次回の『内観力』は間違いだらけの鍛え方をお伝えしたい。

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