研究レポートReport

「第47回 内観力 ~からだの声を聞く~ N0.8 『からだをからだのまま扱う』

2012年も後2日で終わろうとしている。
私の身体感覚も今年1年で随分変化してきた。

鎖骨の使い方に気付いてから骨組みを動かすコツを掴み
自然な流れで肋骨に行き着いたが最近では背骨の凄さに改めて驚いている。

からだをからだのまま使ってあげることの素晴らしさ。

楽な姿勢、楽な座り方、楽なポジション、楽な歩き方、楽な走り方、、、
楽なことを求めることは決してサボルことではなく合理的なからだの使い方に過ぎない。

昔の私は随分、自分自身のからだに対して酷いことをしてきたことを後悔している。

なぜなら、からだに要らぬ負荷をかけて
からだをいじめ抜くことがトレーニングだと信じていたからである。

ストレッチをして痛みを感じても
それが筋肉が伸びて効果が出ているからだと思ってきた。

腹筋をして固くなり割れてきたのをみて
強くなっているのだと思ってきた。

体幹トレーニングをしてプルプル震えるのは
筋力がないからで弱いからだと必死で耐えることが強くなることだと思ってきた。

スポーツ選手に怪我は付き物で
怪我するくらいしない奴は強くなれるはずがないと思ってきた。

残念なことに、これはすべて『脳』が喜ぶことばかりであって
からだは声なき悲痛な叫び声を痛みや筋肉痛で教えてくれていたのだが
私は、その声を聞き取ってあげられなかった。

現役時代、何度も何度も怪我した。

しかし、怪我することは悪いことではなく
今のからだの使い方は間違っているんだと教えてくれているのだ。

このチャンスを生かすべきなのに
更に間違った方向に進んでしまう人が多いし私自身もそうであった。

・筋力がないからだ、、、 →筋トレに励んでしまう。

・柔軟性がないからだ、、、 →ストレッチに励んでしまう。

・メンタルが弱いからだ、、、 →自分自身を責めて苦しめてしまう。

からだは何にも悪いことをしていない。
常に違和感と心地良さの信号で私達に良い悪いを教えてくれている。

だが、『脳』は掴めない感覚を嫌がる。
数字やデーターでしか信じない機能を持っている。

特に、科学的データーという言葉に大変弱く
すぐに信じてしまう傾向にある。

しかし、『脳』の得意技は事後処理であり
『脳』が『からだ』をコントロールすることなど出来ない。

このことは最近の脳科学の世界でも解明されてきた事実である。

どれくらい『脳』と『からだ』と開きがあるかといえば
『自分』と『他人』くらいの差があるのだ。

詳しく知りたい方は、
『意識は傍観者である』~脳の知らざる営み~ 早川書房 を一読して頂きたい。

ここで一文を紹介したい。

”アスリートがミスをすると、コーチはたいてい叫ぶ。

『よく考えろ!』。

皮肉なことに、プロのアスリートの目標は考えないことだ。

目指すべきは、熱戦中に適切な作戦行動を意識の干渉なしに自動的に繰り出せるよう、

何千時間という訓練を行うことだ。”


『脳』であれこれ考えて動くと不自然な動きになるので疲れる。
『からだ』が自然に動くといい動作が楽に出来るので疲れない。

最近、正しい姿勢とはどういうことを示すのか?
というテーマでいろんな動作で検証していくのだが
体験された方々はあまりの差が出てしまうので思わず笑ってしまう。

イスに座り、地震が来たという設定で瞬時に動いてもらうのだが
世間一般で言われている正しい姿勢で座っていると居着いてしまって素早く動くことが出来ない。

今度は、あるイメージをして戴いてからイスに座ってもらい
同じように動いてもらうと瞬時に移動することが出来る。

この検証を歩いた場合、スタートダッシュをした場合と
いろんな動作で確認して戴くのだが正しい姿勢で行うと笑っちゃうほど動きにくい。

私が薦めている姿勢は世間一般的には悪い姿勢と言われてしまうかもしれないが
楽に動くという点においてはずば抜けて優れている。

何にも特別なことを指示している訳ではない
背骨を背骨のまま使いなさいと言っているだけに過ぎない。

皮肉なことに頭がいい人ほど考えてすぎてしまい
その結果、動けない状態を作り上げてしまう。

自然体を作ろうとした瞬間に不自然な状態になってしまっているのだ。
いかに、からだの動きを自由にさせてあげて『脳』を介入させないかが重要である。

この訓練は一見難しいのだが慣れてくると面白くてタマラナイ!

私の場合、『韓氏意拳』の守 伸二郎先生のお陰で体感することが出来た。
まだまだ完璧ではないが『脳』を介入させない方法を積み重ねることで進化していける。

からだの構造を切らさず自然な状態で動くとき、
自分でも信じられないくらいの凄い力がからだが生み出される。

もう12年くらいウエイトトレーニングも体幹トレーニングも補強(腹筋・背筋・腕立て)を
全くしていない私だが今の方がずば抜けて凄い力が出せるし俊敏に動けるからだになっている。

それは骨身でからだを支え、筋肉や内蔵や水分などの重さ(体重)を活用して緩んでいるからだ。

踏ん張ったり、力を込めている状態でいい動作などできる訳がない。
まして緊張している状態や強張っている状態でトレーニングして何の意味があるというのか?

固定して静止させた状態で負荷をいくらかけても
実際の動作のどの部分で使えるというのだろうか?

頭でっかちになってしまった最近のトレーニング理論だが
そろそろ本当のことに気付かないと未来ある子供達が可哀想である。

先日、スポーツケア整体研究所に来て頂いたHさん(陸上・長距離)から戴いたメールの中で
素晴らしい言葉があったので御紹介したい。

『自分を助けるのも苦しめるのも、まさに自分自身なんだという事を、先程吹雪の中で深く感じてきました。』

Hさんは昨年9月に来店されました。
この時のHさんのからだは悲痛な叫び声を出されていました。

当時のHさん自身も引退しようかどうか迷っているとの事でしたが
今ではからだのどこにも痛みがなく自己新記録を連発されている。

骨ストレッチを基本とした動作から鎖骨・肋骨・背骨の動作を体感され
本当の体幹部の鍛え方を知っていただいたHさんのからだは進化することはあっても退化することはない。

自分のからだに対して、何をしてあげるのかで結果は自ずと変わってくる。

身体能力を向上させるのではなく
身体感覚を向上させることが本当に必要なことなのだ。

”ダイエット=最適化”

これは心友の長沼さんから教わったことだが
ダイエットとは最適化にすることだ。

そろそろ自分自身にとっての最適化のために
いろんなトレーニングをダイエットされてはいかがだろうか。

何が本当に必要なことで
何が本当は不必要なことなのかを
我が身を持って教えてもらうべきである。

残ったものは以外にカンタンであり楽であり楽しいものであるはずだ。

答はからだが知っている!

本当のことはシンプルであり簡単すぎるくらいカンタンなのである。

2013年もいろんなトレーニングを積み重ねていき
更なる身体感覚を磨いていきたいと思う次第である。

       感謝

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