第56回日本リハビリテーション医学会学術集会
「T型溝付きシューズによる高齢者の歩行姿勢の改善」
2019年6月、神戸市で行われた「第56回日本リハビリテーション医学会学術集会」にて、 WT-LINE®シューズの実験結果を、京都大学の加納先生、金先生、影山様、フェニックス西神戸キュアセンターの平井様、須崎様のご協力の元、「T型溝付きシューズによる高齢者の歩行姿勢の改善」を発表しました。
厚生労働省の発表によると、平成31年3月時点の要介護認定者は658万人、65歳以上の高齢者に占める割合は18.7%にのぼります。高齢者自身のQOLの向上と介護者の負担軽減の観点から、自立歩行を支援する道具、方法の開発が望まれます。
自立歩行支援の道具として靴に着目し、靴底にT型の溝を彫ったWT-LINE®シューズが高齢者の歩行姿勢および動作に与える影響を検証しました。WT-LINE®シューズは、松村卓が體(からだ)と靴の調和を追究して開発したものであり、この靴を履くと體のバランスが整い、體の重さを筋肉ではなく骨格で支えることができるようになります。また、地面反力を受けやすくなるという特長があります。なお、本研究は京都大学医の倫理委員会の承認を受けて実施しました。
フェニックス西神戸キュアセンターに入所、通所している高齢者20名を対象に、WT-LINE®シューズと普段の靴の2種類の靴を用いてTUGテストをおこないました。椅子から立ち上がって3 m先の目標物まで歩き、折り返して椅子に座るまでが一連の動作です。履く靴の順序は乱数にて決定し、歩行回数は各1回としました。被験者の動作はモーションキャプチャーシステムとビデオカメラにて記録し、得られたデータから、靴の違いによる歩行姿勢と動作を比較しました。
WT-LINE®シューズを履くと、背骨の曲がり方が緩和する傾向がありました。体のバランスが整い、左右差が軽減した被験者が見られました。また、膝から下の動きが腰の動きと連動し、足の運びが滑らかになり歩行速度が上がる傾向がありました。杖や歩行器への依存度合いが軽減することも確認できました。
WT-LINE®シューズと通常の靴では、靴を履いた時の靴底の変形度合いに相違があります。溝の効果で骨と関節が本来収まるべき位置に矯正され、被験者の体の歪みが軽減し、歩行動作の滑らかさが向上したと考えられます。WT-LINE®シューズは健康寿命の延伸やリハビリ患者の治療改善を促す可能性があります。
2019年6月「第56回日本リハビリテーション医学会学術集会」より